drambuieの日記

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60歳からの移動戦略:交通手段を考える

最後は自分の足です。

60歳からの移動戦略:変化するライフスタイルに合わせた交通手段を考える

人生の後半戦、60歳からの生活を豊かに、そして安心して過ごす上で、移動手段の確保は非常に重要なテーマです。移動の自由は、日本国憲法で保障されている基本的人権の一つであり、居住・移転の自由や職業選択の自由、そして幸福追求権などと関連付けられています。人生経験のある皆さんでしたら、この含蓄に首肯することでしょう。

現役時代とは異なり、仕事のための移動が減り、日中の移動が増える中で、あなたはどのような交通手段を選びますか? 日本の多様な地域事情を踏まえながら、賢い移動戦略について考えてみましょう。

日本の大都市:電車が最強のインフラ

東京、大阪、名古屋といった日本を代表する大都市圏に住んでいる方にとって、電車はまさに最強の交通インフラと言えるでしょう。

  • 圧倒的な利便性: 張り巡らされた路線網、運行本数の多さ、そして時間通りの運行は、他国と比較しても群を抜いています。主要駅周辺には商業施設や病院、文化施設が集積しており、電車一本でほとんどの用事を済ませることができます。
  • 経済性: 自家用車を持つ場合にかかる車両購入費、駐車場代、ガソリン代、保険料、税金などを考慮すると、電車での移動は非常に経済的です。定期券や高齢者向けの割引パスを利用すれば、さらに費用を抑えられます。
  • 健康維持と安全: 駅までの徒歩や乗り換えは、適度な運動にもなり、健康維持に貢献します。また、交通事故のリスクを大幅に減らせるのも大きなメリットです。飲酒を気にせず移動できる自由さも魅力です。

都会に住むシニアにとって、免許返納後の生活も電車がカバーしてくれる安心感は計り知れません。

大都市の災害リスク

交通手段から話が飛びますが、ではリタイア後の居住地として、大都市が最強かというと、災害時のリスクは気になります。 山林や平原などの余白が少なく、ビルや住宅が密集した地帯での災害はかなりの混乱を招くと考えられます。 また、東京、大阪、名古屋など、大河川の土砂が堆積してできたような地形の地盤は軟弱な危険性もあります。 ここでは深く追求しませんが、交通の利便性以外も考慮して考えると、必ずしも大都市が最強とはならないかもしれません。

地方:車がないと「無理ゲー」の現実

一方で、日本の多くの地方都市や過疎地域では、自家用車が文字通り「生活の足」です。

  • 公共交通機関の限界: 路線バスの本数は少なく、運行範囲も限られることがほとんど。電車が通っていない地域も多く、あっても駅が生活圏から離れていることも珍しくありません。
  • 生活必需品の確保: スーパーや病院、役所などが広範囲に点在しているため、車がなければ日々の買い物や通院すらままならないのが現実です。「車がないと無理ゲー」と言われる所以です。
  • ライフスタイルの維持: 友人との交流や趣味の活動、地域コミュニティへの参加など、アクティブな生活を維持するためにも、車の存在は不可欠です。

地方に住み続けることを選ぶのであれば、免許返納を見据えた自家用車の代替手段(コミュニティバス、タクシー、近隣住民との助け合いなど)を早めに検討し、情報収集しておくことが賢明です。

自動車の運転をなるべく続けることも戦略の一つでしょう。昨今、高齢ドライバーへの視線は冷たいですが、若者に比べて特に事故率は高いわけではありません。 しかし、60代以降は事故率が上がってくるのも確かです。 また、死亡事故の比率は高齢者が若年層を上回ってしまうようです。運転中に意識を失う場合が多いのかもしれません。 自動ブレーキを始めとした自動車の技術革新にも注目していきたいですね。

地方の主要都市:生活はできる、でも少し物足りない?

大都市ほどではないけれど、それなりに人口が多く、公共交通機関も存在する地方の主要都市。ここでは、少し複雑な状況が見えてきます。ここでは政令指定都市よりもう少し小さいぐらいの地方都市をイメージしています。

  • 中心部の衰退と郊外化: 多くの場合、かつての賑わいを見せた駅前商店街はシャッター通りと化し、主要な商業施設や娯楽施設は郊外の大規模ショッピングセンターへ移転しています。
  • 移動手段のジレンマ: 日常の買い物や通院はバスでも何とかなるかもしれませんが、広大な郊外のショッピングセンターへは、自動車かバスでの移動が基本となります。バスの本数が少なかったり、運行時間が限られたりすると、やはり不便を感じる場面が増えるでしょう。
  • 「そんなに楽しくはない」かも: 公共交通機関だけで生活が完結しにくいため、どうしても行動範囲が狭まりがちです。車を手放すと、これまで気軽にアクセスできた場所へ行けなくなるストレスや、選択肢が限定されることによる物足りなさを感じるかもしれません。中心部にある図書館・美術館・博物館といった文化施設も都会に比べると貧弱です。若いうちは海や山の自然に親しむこともできますが、それができなくなった場合に、娯楽が少なくなります。自宅で快適に暮らせることを確保しておく必要があります。

このような都市に住む場合、駅前の利便性が低下しているからといって、必ずしも駅周辺を避けるべきとは限りません。むしろ、地方の主要都市の「ひとつ隣の駅」に目を向けてみるのも一案です。通勤客をターゲットにした駅チカのマンションは、比較的築浅でバリアフリーに対応している物件も多く、コンビニや小さなスーパーが併設されていることも。中心部の雑多な雰囲気から離れつつも、電車の利便性を享受できる穴場かもしれません。いわゆる再開発でしっかりと区画整理された地区の方が、歩いたり、車いすやシニア向け手押し車(シルバーカー)や電動シニアカーの移動に適していることも多いです。

地方の主要都市は大都市に比べて、比較的安価で、庭付きの一戸建てや広めのマンションに住めるなど、住環境の選択肢が広いのが魅力です。文化的にも、興味のある分野によっては、大都市に比べても遜色ない地域コミュニティや、活発なサークルが存在する場合もあります。

また、自宅から新幹線や空港が短時間でアクセス可能な場合、ある程度の交通費を生活予算に見込んでいくことで、定期的に遠距離の観光や旅行が可能になります。ただし、それも80歳以上の高齢になると、利用が厳しくなるかもしれません。

良い面と悪い面が入り混じっていて、珠玉混淆なのが、特色と言えるでしょうか。

地方のタクシー事情:気軽に利用できるか?

自家用車を手放した際、補完手段として期待されるのがタクシーですが、地方では都市部とは事情が異なります。

  • 捕まりにくさ: 都市部のように流しのタクシーは少なく、基本的に電話で呼ぶか、駅や病院などの特定の乗り場に行かなければなりません。
  • 料金の高さ: 短距離でも初乗り運賃がかかるため、頻繁に利用すると大きな出費になります。自宅から病院やスーパーまで何回も乗車する場合、高額になりがちです。
  • 運転手不足: 地方ではタクシー運転手の高齢化や人手不足が深刻化しており、時間帯によっては配車に時間がかかったり、そもそも配車ができなかったりすることもあります。

従来からの電話によるタクシーの配車依頼に加えて、スマホアプリでもタクシーを呼ぶことができます。機会があるときに試してみるといいでしょう。それでも、通勤時間帯に雨が降った時などはタクシーはほどんどつかまりません。

短時間勤務の運転手の可能性

少し話が飛びますが、ここで、60歳以降の再就職を考える上で、「タクシー運転手」という選択肢が浮上します。 タクシー運転手は60歳以降でも働ける就職先としてメジャーな部類に入り、経験や特別なスキルがなくても始められる点が魅力です。

しかし、タクシー運転手は第二種運転免許が必要であり、これは第一種免許とは異なる専門的な知識と技能を要します。また、タクシー会社に雇用される場合、ある程度の長時間労働を要求されるケースも少なくありません。第二種免許の取得費用を補助してくれるタクシー会社もありますが、60歳を過ぎて、しかも週2~3日だけ働きたいといった希望が通るかは、会社や地域によって異なります。

一方で、高齢者の再就職先として比較的ポピュラーな介護施設の送迎ドライバーは、利用者から直接運賃を受け取る営利目的の旅客運送ではないため、第二種運転免許は不要です。普通自動車第一種免許があれば運転できる場合が多く、介助などの業務をこなせれば、社会貢献にもつながるやりがいのある仕事と言えるでしょう。

ただし、勤務時間が短時間な割に、一日二回、朝と夕に迎えと送りをしないといけないため、時間効率は悪いというデメリットもあるようです。

結局、最後は自分の足:80代からの理想の暮らし

交通手段の話に戻りましょう。

どんな交通手段を選んでも、最終的に重要になるのは「自分の足でどこまで移動できるか」です。80代、90代になっても、公共交通機関の駅やバス停、スーパー、病院、公園など、生活に必要な施設まで歩いて行ける範囲で生活ができるのが理想です。

  • 生活圏の見直し: 60代、70代のうちに、将来的に車を手放すことを想定し、徒歩で移動できる範囲に必要な施設が揃っているか、自宅周辺の環境を見直しておくことが大切です。
  • 健康寿命の延伸: 日常的なウォーキングや適度な運動は、足腰の衰えを防ぎ、健康寿命を延ばす上で不可欠です。徒歩での移動は、そのまま健康維持活動にもなります。
  • コミュニティとの繋がり: 徒歩圏内で生活できれば、近隣住民との交流も生まれやすくなり、孤独を防ぎ、豊かなシニアライフを送ることに繋がります。

20年後の街の姿を想像すると?

もし徒歩での移動で生活できない場合、また徒歩での移動が困難になった場合、自家用車の代替手段、送迎してくれる人の確保、あるいは食品の宅配サービスなどの利用、といった手段を考える必要があります。

ただし、こういったサービスは、民間の場合、突然のサービス終了の危険性があります。自治体が運営するコミュニティバスなども、法律上の義務ではないため、同様に財政状況や利用状況の変化によって終了・縮小する可能性があります。(ごみ回収のように法律で規定された必須サービスとは異なります。)

また民間という意味では、スーパーや病院がなくなる危険性もあります。散歩したりするときに周囲の住民の年齢層を観察してみましょう。また自治体のホームページなどで人口動態を確認できるでしょう。ある程度、スーパーや病院の経営が持続可能なぐらい人口が維持される地域に住んでいるか、サービス終了時に対応できそうか考えておきましょう。

医師が個人で開業している場合、医師の年代も気になります。自分より年上の場合、自分より早くお亡くなりになる可能性があります。他の医師も含めて複数人で回しているような医院の方が安心かもしれません。20年後の街の姿を想像してみましょう。

それでもここに住むという選択

もちろん、今いる場所が気に入っている場合、そうしたリスクを許容することもあるでしょう。救急車が来るのに時間がかかるかもしれないけど、それは分かったうえでここに住み続ける、それも立派な選択だと思います。

60歳からの移動戦略は、単に「どこへ行くか」だけでなく、「どのように生きるか」というライフスタイル全体の設計と密接に関わっています。今から将来を見据え、自分にとって最適な移動手段と生活圏を考えていくことが、安心で充実したセカンドライフへの第一歩となるでしょう。