体内時計も年齢とともに変化します
以前のブログで、社会に適合しにくい体内時計を持つ人たちについて書きました。
- 朝に寝て、夕方起きる人
- 24時間起きて、24時間寝る人
- 毎日生活時間がズレていくパターン(非24時間睡眠覚醒リズム障害など): 体内時計の周期が例えば26時間の場合、ある日午前6時に起きたら、次の日は午前8時、その次の日は午前10時…というように、毎日2時間ずつ起床時間がずれていきます。
- そもそも予測できないパターン: さらに深刻なケースでは、何時間眠るか、いつ目覚めるかが本人にも予測できない場合があります。こうなると、定まった生活リズムを持つこと自体が困難になり、日常生活を送る上でのハードルが非常に高くなります。
こうしたケースでお悩みの方に、参考までに私の体験をお話しします。加齢とともに改善されるかもしれないという話です。
30歳ぐらいまではめちゃくちゃだった
若いころはやりたいことを我慢できないので、色々と無茶をしていました。
例えば、深夜ラジオ。これを聞きたいので夜更かしして、学校で眠くなる。あるいは帰宅してすぐに寝てしまい、夜中に起きて、また朝方に寝るなど、睡眠を分割する。
学校の宿題をギリギリまでやらないので、前日になって徹夜。帰宅した後、10時間、20時間と寝てしまう。
また大学生時代など、比較的、時間に自由があるときは、夜更かしをしたり、寝たいだけ寝たりで、まったく生活のパターンが一定していませんでした。それも自分が望んでいればまだいいのですが、本当はこうした生活リズムを止めたいのに止められない感じでした。日曜の夕方まで寝てしまい、何もできずに自己嫌悪という感じです。
成人してお酒を飲み始めると、これも生活リズムにはいい影響はありません。そういえば、気が付いたら、道端や河原で寝ていたという危険なこともありました。若気の至りと言えば聞こえは良いですが、今思えばヒヤッとしますね。
30代までは遅刻や欠勤も多く、褒められるような生活リズムではありませんでした。
50代後半からかなり落ち着いてきた
40代までは、休日は11時、12時まで寝てしまっていました。平日の仕事でたまった睡眠負債を返済している感覚です。ですが、本当は朝起きて有意義な休日にしたいんだけどできないという感じです。
それが、50代後半になり、休日でも9時ぐらいには起きられるようになりました。劇的な変化とまでは言いませんが、身体が自然と目を覚ます時間が早くなったのは、大きな進歩です。
また、そもそも体力がなくなってきたのか、23時ぐらいになると眠気が抑えられなくなり、寝ることしか考えられなくなりました。かつては午前2時、3時まで平気で起きていられたのに、今では信じられない話です。まるで、身体に自動で電源が落ちるタイマーが内蔵されたかのように、自然と眠りにつくようになりました。
どこまでが自分では変えられないもので、どこからが変えられるものか、は実は区別が難しい
睡眠というのは、ある一日だけを見ると、頭で「今寝るぞ」と意識しても、すぐに眠れるものではありません。特に「眠らなきゃ」と意識しすぎると、かえって眠れなくなることもありますよね。
だからといって、自分の睡眠リズムは一生変わらないのかというと、そうでもありません。意識しても変えられないことも、状況の変化や長期的な時間の経過で変わることもあります。
加齢による体力の低下や、代謝の低下は、一般的には良いことではないでしょう。ですが、私のケースのように、それがうまいこと影響して、生活リズムが安定してくることもあります。昔は悩みの種だった「寝る時間」が、年齢を重ねることで自然と整ってきたのは、皮肉なようですが、私にとっては嬉しい変化でした。
もちろん、これはあくまで私個人の体験であり、全ての人に当てはまるわけではありません。しかし、もし今、ご自身の体内時計や睡眠リズムに悩んでいる方がいらっしゃったら、もしかしたら長い目で見たときに、良い変化が訪れる可能性もあるということを知っておいてほしいのです。焦らず、ご自身の身体の声に耳を傾けることが大切なのかもしれません。
ストレスが体内時計に与える影響と「リベンジ夜更かし」
現代社会を生きる上で避けて通れないのがストレスです。そして、このストレスもまた、私たちの体内時計や睡眠に大きな影響を与えます。
日中の仕事や人間関係、様々な情報に晒されることで、私たちは知らず知らずのうちにストレスを抱え込んでいます。ストレスは、自律神経のバランスを乱し、交感神経が優位な状態を保ちやすくします。これにより、夜になってもなかなかリラックスできず、眠りにつきにくくなることがあります。
リベンジ夜更かしとは?
特に近年注目されているのが「リベンジ夜更かし(Revenge Bedtime Procrastination)」という現象です。これは、日中の仕事や家事、育児などで自分の自由な時間が持てなかった人が、その失われた時間を取り戻そうとするかのように、本来寝るべき時間を削ってまで夜更かしをしてしまう行動を指します。
「せめて夜くらいは自分の好きなことをしたい」「この時間だけが唯一の自由時間だ」という心理が働き、テレビを見たり、動画を視聴したり、SNSをチェックしたりと、ついつい夜遅くまで起きてしまうのです。これは、一時的なストレス解消になるように感じますが、睡眠時間を削ることでかえって身体的・精神的な疲労が蓄積され、結果的に体内時計の乱れを加速させてしまいます。悪循環に陥りやすいので注意が必要です。
専門家から見た体内時計と加齢の変化と、退職による影響
私の体験はあくまで個人のものですが、実は睡眠医学や時間生物学の分野では、加齢に伴う体内時計の変化は広く知られています。
加齢による体内時計の変化
一般的に、高齢になると「前進型睡眠相症候群」と呼ばれる状態になる人が増える傾向があります。これは、就寝時刻や起床時刻が若い頃よりも早まる現象です。若い頃は夜更かしをしていても平気だった人が、年齢とともに早く眠くなり、早く目が覚めるようになるのは、この体内時計の変化が影響していると考えられています。これは、体内時計の周期を調整するメラトニン分泌のリズムが前倒しになったり、光に対する感受性が変化したりするためと考えられています。
また、深い睡眠であるノンレム睡眠の割合が減り、浅い睡眠が増えることも知られています。これにより、夜中に目が覚めやすくなったり、熟睡感が得られにくくなったりすることもあります。
なぜ、私の体験と合致するのか?
私の「50代後半からかなり落ち着いてきた」という経験は、まさにこの加齢による体内時計の変化と一致すると考えられます。若い頃の不規則な生活が、加齢とともに自然と「早寝早起き」の傾向にシフトしたことで、結果的に生活リズムが整い、安定した睡眠が得られるようになったと解釈できます。
退職がストレスを軽減する可能性
加えて、高齢期における退職も、体内時計や睡眠の改善に影響を与える可能性があります。現役時代は、仕事の納期、人間関係、通勤、など、多岐にわたるストレスに日々晒されていました。睡眠時間を削ってまで仕事をしたり、「リベンジ夜更かし」をしてストレスを解消しようとしたりすることも珍しくなかったでしょう。
しかし、退職することで、これらの仕事由来のストレスから解放されることが期待できます。規則正しい出勤時間や、仕事の責任から解放されることで、精神的な負担が大幅に減り、結果として心身のリラックスに繋がりやすくなります。時間的な制約が少なくなることで、自分のペースで生活リズムを組み立て直し、光や運動といった体内時計の調整因子をより意識的に取り入れやすくなることも考えられます。実際に、定年退職後にストレスが減り、心身の健康度が上がるという見解もあります。
もちろん、退職後の生活変化が新たなストレス源となるケース(経済的な不安、社会との繋がり喪失など)もありますが、少なくとも仕事に関するストレスが減ることで、睡眠の質が改善し、体内時計が整いやすくなる側面は大きいと言えるでしょう。
体内時計の調整因子
体内時計は、主に光、食事、運動などの外的要因(同調因子)によって調整されています。
- 光: 特に朝の強い光は、体内時計をリセットし、活動モードに切り替える最も強力な同調因子です。高齢になると、網膜での光の受容能力が低下するとも言われていますが、それでも日中の十分な光暴露は重要です。
- 食事: 規則的な時間に食事を摂ることも、体内時計を整えるのに役立ちます。
- 運動: 適度な運動は睡眠の質を高め、体内時計の調整にも良い影響を与えます。ただし、就寝直前の激しい運動は避けるべきです。
もし、ご自身の体内時計の乱れに悩んでいる方がいれば、まずはこれらの同調因子を意識した生活習慣の改善を試みるのが第一歩となるでしょう。
まとめ:自分に合った生活リズムを見つけるために
私の体験は、加齢や生活環境の変化によって、生活リズムが自然に整う可能性があることを示唆しています。しかし、全員がそうなるわけではありませんし、睡眠に関する悩みは多岐にわたります。
漫画「働かないふたり」では主人公の二人も昼夜逆転生活をしていますが、彼ら以外にも昼夜逆転しているご老人が登場したりします。それによりストレスがなく幸福感も問題ないようであれば、社会一般とは異なる体内時計を受け入れるという選択肢もあると思います。
大切なのは、ご自身の身体の声に耳を傾け、無理のない範囲で、ご自身の生活に合ったリズムを見つけることが、心地よい睡眠への第一歩となるでしょう。もし変えたいという希望があるのでしたら、「光」「食事」「運動」といった同調因子を意識した生活習慣を心がけることもできます。また、ストレスとの上手な付き合い方や、「リベンジ夜更かし」のような行動に意識的に歯止めをかけることも、健やかな睡眠を維持する上で重要になります。
加齢とともに身体は変化していきます。その変化を受け入れつつ、より良い睡眠と生活リズムを見つけるために、日々の暮らしの中でできる工夫を探してみてはいかがでしょうか。
