【実録】妻の放置投資 vs 私の小細工投資。結果、資産が多いのは?
私は、妻の積立の設定も行っています(行いました)。この経験から、投資における「人の判断」がいかに余計なものかを痛感しています。
妻の積立設定
妻の投資方針は極めてシンプルです。
確か、当初は旧・NISAで月10万円、年額120万円でした。旧・NISAの始まった2014年ごろからと思います。 当時、著名な経済評論家であった山崎元さんが「日本株式40%、先進国株式60%」という非常に合理的でシンプルなポートフォリオを提案していたので、それに乗っかっていたと思います。 現在は、旧・NISAを現行NISAに移動しているところです。 そして、そのタイミングで、よりシンプルに、より幅広く分散された「全世界株式100%」に移行しようとしています。
特筆すべきは、妻の積立投資は、一度設定したら、私(夫)の助言や、市場の変動に一切惑わされることなく、粛々と自動で積立が実行され続けたということです。
私の場合
私も、コアな部分に関しては、基本的には妻と同じような積み立てを行っていたのですが、それに加えて、今となっては余計なことばかりしていました。
- サテライト投資と称して、ロシア投信など興味のあるものを買う
- 特定の国やテーマに「面白そうだから」「成長しそうだから」と、自分の感情や予測に基づいた資金を投入しました。
- 同じく、一部のポートフォリオにREIT(不動産投資信託)を割り当てる
- 昔、ETFのほうが信託報酬が安かったので、リレー投資として、TOPIXやMSCIコクサイのETFを購入する
- 僅かな信託報酬の違いを求めて、都度購入・売却の手間をかけ、さらに売買のタイミングを自分で判断するという「作業」を増やしました。
これらは全て、「自分で考えた方が、市場平均を上回れるのではないか」「もっと効率の良い方法があるのではないか」という、「人の判断」と「欲」がもたらした行動です。
結果
その結果、何が起こったかというと、色々と工夫して、かつ、妻よりも多少、多額の投資をしていた私の資産よりも、一切手を加えなかった妻の資産の方が、いつの間にか大きくなりました。
私の資産は、ロシア投信の価値が暴落したり、REITの低迷期があったり、ETFの売買でタイミングを誤ったりと、「余計な判断」によるマイナス要因が積み重なりました。
一方、妻の資産は、設定されたルールに従って、ただただ市場の成長という「恩恵」を享受し続けたのです。
この対比は、インデックス投資の本質をこれ以上ないほど雄弁に物語っています。投資において最も難しいのは、「何もしないこと」です。
「投資は、人の判断を加えてはいけない」
この十数年で、私が投資で学んだ最大の教訓は、これに尽きます。市場のプロでもない私たちが取るべき最善の戦略は、「世界経済の成長」という大きな波に乗ることであり、その波を乱すような自己流の判断や操作は、ただのノイズでしかないということです。
理論的な裏付け:「市場の効率性」と「行動経済学」
なぜ、人の判断を排除した妻の運用が、複雑な操作を加えた私の運用を上回ったのか。これには、金融市場の二大理論が大きく関わっています。
1. 効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis: EMH)
この理論は、「株式市場の価格には、公表された情報だけでなく、あらゆる情報がすでに織り込まれている」と主張します。つまり、個人の投資家が「これは安い」「これは上がる」と判断したところで、その情報はすでに多くのプロの分析によって株価に反映されているため、継続的に市場平均を上回り続けることは、ほぼ不可能であるということを示唆しています。
私が「ロシアは成長するだろう」「REITは魅力的だ」と考えたとき、その判断は市場にとっては「既知の情報」であり、それを基に売買し仮に利益を得たとしても、それは偶然の域を出ません。効率的な市場においては、市場全体(インデックス)を購入し、その成長の恩恵を淡々と受けることが、最も合理的な戦略となるのです。
2. 行動経済学(Behavioral Economics)による「非合理性」
投資の失敗の多くは、論理的な判断ではなく人間の感情(非合理性)によって引き起こされます。これが行動経済学のテーマです。
- プロスペクト理論:人は利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛をより強く感じる傾向があります。私のサテライト投資は、利益が出たときの喜びを求めた「欲」であり、損が出たときの「恐怖」で売却タイミングを誤る原因になりました。
- 保有効果:自分が買ったもの(ロシア投信など)に愛着を持ち、客観的な価値以上に高く評価してしまう傾向です。
- 群集心理:市場が過熱した時に「乗り遅れたくない」と購入したり(高値掴み)、暴落時に「これ以上損したくない」と売却したり(安値売り)する行動です。
妻の「積立設定して放置」という戦略は、これらの人間の非合理的な判断が介在する余地を完全に排除しました。その結果、市場の成長というリターンだけを純粋に享受できたのです。
「敗者のゲーム」にもあるように、インデックス投資とは、市場の効率性を認め、人間の感情による非合理性をシステムで克服するための、最も賢明な「戦略的敗北」なのです。
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