drambuieの日記

drambuie, life is a dram to be satisfied with

60歳からの投資戦略:積み立てか一括投入か

60歳からの投資戦略:積み立てか一括投入か

昨年、亡くなられた山崎元さん(1958-2024)の主張の中で、なかなか取り入れるのが難しかったのが、手持ち資金を一括で投資したほうが良いという主張です。

それは「マーケット・タイミングは読めない」「時間による分散効果は限定的」「投資の世界では、少しでも長く、市場にお金を置く方が有利」という考えに基づいています。

なぜなら、統計的に見て、投資期間が長くなるほど、一括投資(Lump Sum Investing)の方が、ドルコスト平均法(積立)よりも高いリターンを生む確率が高いことが示されているからです。特に、右肩上がりの経済成長を前提とする全世界株式やS&P 500などのインデックス投資においては、「市場に滞在する時間(Time in the market)が、市場に出入りするタイミング(Timing the market)よりも重要である」という原則が強く働きます。

また、この主張の背景には、金融市場の基本理論である「効率的市場仮説(Efficient Market Hypothesis)」があります。この理論は、市場価格は常にすべての情報を織り込んでおり、株価には割安や割高というものは存在せず、現時点での値が常に正確であると見なします。つまり、今日の価格が「最安値」でも「最高値」でもなく、単に「適正価格」であるとすれば、価格が動くのを待つ合理的な理由はありません。

しかし、この一括投入の最大の心理的障壁は、「高値掴み(たかねづかみ)」への恐怖です。退職金など、人生で一度きりの大きな資金を投入した後、すぐに市場が暴落した場合の精神的ダメージは計り知れず、多くの人がリスクヘッジとして「積立」を選択します。これは、合理性よりも「後悔しないための心理的な安心感」を優先する、人間として自然な行動と言えます。

新NISAの成長枠とつみたて枠で実践比較:22ヶ月の記録

しかし、少なくとも、ここ最近の株価の上昇基調の中では、一括投入の利点が明確になっています。

私は、この山崎さんの教えと、心理的な安心感のバランスを取るため、2024年1月に開始した新NISAで、以下のような戦略を取りました。

  • NISAの成長枠(240万円)は毎年1月に一括投入というか、旧・NISAからの移行資金をベースに、年間の投資枠上限をできるだけ早く使い切る戦略を採用しました。これは、「統計的優位性」を重視した判断です。
  • つみたて枠(120万円)は毎月積み立てを行いました。これは、万が一の暴落時のリスクヘッジと、心理的な安心感」を確保するための判断、そして正直に言えば、クレカ積立によるポイントが魅力的だったからです。
  • 購入したのはオールカントリーです

現在のところ、2024年1月の新NISA開始から約22ヶ月(2025年10月現在)が経過した時点での損益率が以下のように差が開いています。

投資枠 投資方法 損益率(概算)
成長枠 年初一括(1月) +28%
つみたて枠 毎月積立 +19%

この結果は、「上昇相場においては、市場に資金を置く時間が長い方が有利」という原則を、私自身の投資経験として明確に示しています。年初に一括で投資した成長枠の方が、その後の株価上昇の恩恵をフルで受け、約9ポイントも高いリターンを得ています。

証券会社のポイント還元率と、投資リターンの重要性

積立投資の大きな魅力の一つとして、クレジットカード積立によるポイント還元があります。主要なネット証券では、積立額に応じて0.5%から最大4.0%程度のポイントが付与されます。(高還元率は年会費の高いカードなど、特定の条件が必要です)。

私も毎月の積み立てを継続したのは、このクレカ積立のポイントを魅力的に感じたからです。仮に私が積立枠(毎月10万円)に対し、一般的な還元率1.0%のカードを利用したとすると、22ヶ月間で獲得できるポイントは22,000円相当になります。

しかし、このポイント利益と、投資リターンを比較すると、積立という行動の「経済的な意味」が明確になります。

ここでは、比較を分かりやすくするため、総投資額を22ヶ月間の220万円として、28%と19%の利益を計算します。

項目 一括投入 毎月積み立て 差額
概算利益(投資リターン) 220万円 × 28% ≒ 61.6万円 220万円 × 19% ≒ 41.8万円 約19.8万円
ポイント還元利益 0円(現金/銀行引落の場合) 2.2万円(1.0%還元の場合) -2.2万円

投資リターンの差額はポイントの約9倍

この比較が示すのは、上昇相場において、ポイント還元を追いかけて積立を選んだ行動は、結果として意味がない行動だったということです。ポイントによる利益(2.2万円)は、一括投資との比較で逃したリターン(約19.8万円)の約9分の1に過ぎません。

ポイントはあくまで「おまけ」であり、リターンの最大化という観点からは完全に副次的な要素です。この事実こそ、山崎元さんの主張の裏付けと言えるでしょう。

結論:60歳からの投資戦略と心理的現実

今回の私自身の新NISAでの運用実績が示しているのは、現時点、つまり株価が上昇基調にある局面においては、一括投資が積立投資よりも明確に有利であるという事実です。これは、山崎元さんの提唱された「時間による分散効果は限定的であり、少しでも早く市場に資金を入れるべき」という理論を強力に裏付けています。

しかし、60歳からの投資、特に退職金などの大きなまとまった資金を扱う場合、理論だけでは割り切れない現実があります。それは心理的な安心感」です。

一括投入によって高リターンを得られる可能性が高まるとしても、もし投入直後に市場が急落した場合、その精神的な負担は計り知れません。生涯で一度きりの資金を「賭け」のように感じることは、穏やかな老後を送りたいと願う60代の投資家にとって大きなストレスになり得ます。一部でも積み立てで行っていれば、相場が下落しても「でも全部は一括投入してない、積み立てでこれから買い増しできる」と自分を納得させることができるかもしれません。

したがって、我々60代の投資戦略の結論は、以下のようになります。

【最終結論】 統計的・理論的に見れば、一括投資がベストです。しかし、精神的な安定を重視し、後悔を避けるための保険として、積立投資を併用することも、やむを得ない賢明な判断と言えます。

私が実践したように、成長枠で「一括投資の優位性」を追求しつつ、つみたて枠で「積立による心理的な分散効果」と僅かなポイント還元を享受する「ハイブリッド戦略」は、合理性と心理的現実のバランスを取る、現実的かつ最も続けやすい方法でしょうか。皆さんはいかが思われますか。