60歳からの投資戦略:60歳で改めてリバランスを考える
導入:リタイアメント期の最優先事項
以前のブログでiDeCoのリバランスについてお伝えしました。また別の以前のブログで、頻繁な売買がパフォーマンスを低下させる可能性もお話ししました。
このブログでは
- リバランスの必要性や、どのように行うかを検討したうえで、
- それで結局リバランスは本当に必要なのか
という2段階で検討してみたいと思います。
⚠️【注意】この記事では、「リバランス」に焦点を当てます。「資産の取り崩し方法」については、別の記事で考えるつもりです。(私自身、まだしっかり考察していないとも言う)
さて、60歳以降、投資の目的は「資産を大きく増やすこと」から「資産を維持し、安定的に取り崩すこと」へと大きく変わります。この段階で最も重要なのが、リスク管理です。
リタイアメント期に最も避けたいのが、退職直後の暴落によって引き起こされる「連鎖的リタイアメントリスク(Sequence of Returns Risk)」です。
📌 連鎖的リタイアメントリスクとは
これは、資産を取り崩し始めた初期に市場の大きな暴落(マイナスのリターン)に遭遇することで、資産寿命が大幅に短くなってしまうリスクです。
資産価値が下がっているにもかかわらず、生活費のために定額を取り崩し続けると、残りの資産ユニット(口数)が通常よりも多く売却されてしまいます。この「ダブルパンチ」により、その後の市場が回復した際の資産の回復力が失われ、最終的に資産が早く尽きてしまうのです。
リバランスは、このリスクを軽減するために、リスク許容度を常にコントロールするための生命線となります。
1. 基本の資産配分:目標とするリスクの決定
中程度のリスクとリターンを両立する配分として、「株式 50%:債券 50%」などのバランス型ポートフォリオが標準的です。リバランスでは、まず、この「元に戻したい配分」を明確に定めましょう。株式と債券(銀行の預金なども含む)の比率維持こそ、暴落時の大ダメージを防ぐ鍵です。
2. リバランスのタイミングと頻度の考え方
リバランスを実行するタイミングは、主に次の2つの方法から選びます。いずれの方式も「感情を排除する」ためのルールです。
- 定期方式: 時期を決めて機械的に実行する(例:毎年12月31日に実行)。これには忘れにくい、年末年始など今後の予定を考える際に、一緒に考えることができるという利点があります。
- トリガー方式: 資産比率の乖離率をトリガー(引き金)として設定し、その乖離率を超えた場合のみ実行する(例:株式比率が±5%以上ズレたら実行)。これには即時性があるという利点がありますが、慌てて対応することになりやすいという危険性もあります。
定期方式の場合でも、事前にトリガー条件のような閾値を設定しておく必要はあります。±1%のような僅かな誤差でリバランスをする必要はありません。
⚡️ リターンを生む「稲妻が輝く瞬間」を逃さない
投資のパフォーマンスは、日々の緩やかな上昇ではなく、ごくわずかな急騰日(稲妻が輝く瞬間)に集中しているという事実があります。
頻繁なリバランスや、市場のノイズに過剰に反応した売買は、絶好調な資産をすぐに売ってしまうことになり、この「稲妻が輝く瞬間」をポートフォリオから外してしまうリスクを伴います。リバランスの頻度を控えめにすることは、市場の勢い(モメンタム)を活かし、この爆発的なリターンを享受しやすくするための戦略の一つです。
3.リバランスの種類と重要度の違い
リバランスをポートフォリオ全体で考えることもできますが、私としては2つに分けて考えてもいいのではないかと感じています。 それは以下の2つであり、それぞれ重要度と適切な頻度が異なります。
| 種類 | 目的 | 推奨頻度/トリガー |
|---|---|---|
| 1. 高リスク資産と低リスク資産の間のリバランス | 【優先】ポートフォリオ全体のリスク管理と、連鎖的リタイアメントリスクの回避。(例:株式と低リスク資産:債券/預金/現金の間の比率です) | やや厳格に設定(年1回または乖離率±10%など)。 |
| 2. 高リスク資産同士のリバランス | 収益性の効率化(例:先進国株と新興国株の間)。 | 頻度を控えめにし、市場のモメンタムを活かす余地を残す。(2~3年に1回または乖離率±20%など) |
⚠️ 世界市場の相関係数の高まり
近年、世界中の株式市場はグローバル化が進み、リーマン・ショック以降、各国・地域の市場間の相関係数が高まる傾向にあります。これは、「どこかの株式市場が暴落すれば、他国の市場も連れ安になりやすい」ことを意味します。
この状況下では、高リスク資産同士を細かくリバランスしても、リスク分散効果が以前より薄れてきています。そのため、2. 高リスク資産同士のリバランスについては、頻度を控えめにし、市場の勢い(モメンタム)を活かす方が合理的かもしれないと考えました。というか、この 高リスク資産同士のリバランスをやらないという選択肢もあるかもしれません。
ただ、こうしたルールの複雑化が余計なお世話で、パフォーマンスを下げる可能性もあります。
一例:リバランスの頻度・ルール
※下表の数値は厳密に考えていませんし、私が実践しているわけでもありませんので、そのまま受け取らないようにお願いします。
| 種類 | 推奨されるルール |
|---|---|
| 1. 高リスク/低リスク間 | 定期方式: 年1回(例:毎年12月)。 トリガー方式: 資産比率が±10%を超え、その状態が数ヶ月(例:3ヶ月)継続した場合に実行。短期的なノイズに反応しない慎重な運用を心がける。 |
| 2. 高リスク資産同士 | 定期・トリガーともに緩め(例:2年に1回、または乖離率±20%など)。相関係数の高まりを考慮し、あまり厳格に実行せず、検討の時間の余裕がなければ見送るといった方針でも良い。 |
4. 実行の規律:感情を排除するルール
リバランスの成否は、最高値や暴落のニュースが流れたときに、感情に左右されず機械的にルールを実行できるかにかかっています。リバランスの本質は市場の予測をすることではありません。
🚨 史上最高値・暴落時に慌てて対応しない
しかし一方で、ニュースなどに過敏に反応することも良いとは言えません。リバランスの必要性が生じるタイミングは、一般的に市場の変動リスクが高まった時であることが多いです。 市場心理が大きく揺れ動いている間、無理に動くことが危険な場合もあります。(もちろん儲けるチャンスかもしれませんが)
市場が大きく動いている時などは、リバランスをすべきだと警告してくれるメディアも多いですが、それが事前に決めたルールではない場合、余計なお世話かもしれません。 設定したルール以外の行動はリスクを増大させる可能性があります。
- トリガーや定期のタイミング以外では、市場の動きに反応しない。
- 焦ってルールを破ると、少しの高値ですぐに売りすぎてしまうとか、安値で売り叩いてしまうことにつながります。
この冷静さこそが、感情に左右されやすい投資において、最も重要な規律です。
| 市場の状況 | 感情が促す行動 | リバランスによる行動(規律) |
|---|---|---|
| 史上最高値の時 | もっと上がるから株式を売らない。あるいは利益確定をしたくなる。 | ニュースなどで史上最高値が指摘されたとしても、慌てて対応せず、リスクを抑制するため(主に高/低リスク間の調整)に設定したトリガーを超えた時のみ機械的に株式を売却し、比率を元に戻す。 |
| 暴落の時 | 怖いから株式を売ってしまう。 回復するかもと思って待ってしまう。 | ニュースなどで暴落が報道されたとしても、慌てて対応せず、割安に買い増すチャンスと認識し、恐怖に打ち勝って機械的に株式を買い増す。この行動は、連鎖的リタイアメントリスクの回避に直結します。 |
しかし、感情的にならないことは人間には不可能です。もし、ルールを守るべきか迷った場合には、いったん保留し「何もしない」ことを選択することもできます。
何もしない方がいいなら、リバランスは本当に必要なのか
ここまで色々と書きましたが、 それどころか、さらに「リバランスなんて何もしない」ほうがいいという可能性もあります。
それはつまり、例えば、「最低限の生活資金の現金/預金」さえ用意できていれば、それ以外の資産には一切手を付けないという戦略です。
例えば、「先進国株と新興国株の比率」が当初の設定とは変わってしまったとしましょう。しかし、それが単に各国の経済成長の結果だとすれば、それを是正する必要はないわけです。(そういえば、オールカントリーを買っていれば、このリバランスは意識する必要がありませんね。)
あるいは、事前に冷静にルールを決めたとはいえ、リバランスをするということは、市場の高騰や暴落に対して何かしら一個人が人為的な対策をしようと決めたことになります。 これは果たして正しいことなのか疑ってみるのも良いと思います。
ただ、60歳からのリバランスにおいて、「最低限の生活資金」を考えるのは、これもまた難しいですね。働いている間なら、「数年間、無職でいても大丈夫」な金額だったかもしれません。しかし、退職後、いったい何年分の生活資金を用意すれば十分なのか。私たちは自分がいつ死ぬかを事前に決めることはできません。
妻の放置投資の場合
以前のブログで何も人の手を加えなかった妻の放置投資のパフォーマンスが良いという話をしました。 drambuie.hatenadiary.org
思い返してみると、妻の放置投資の場合、リバランスもしたことがありません。「日本株式40%、先進国株式60%」という積み立て設定をしました。その後どうなっているか、まったく見ていなかったわけではありませんが、リバランスが必要というような場面はなかったように記憶しています。もちろん、一時期は日本株式が低迷したり、逆に最近は日本株式が好調だったり、時代のトレンドはありました。しかし「4:6」が、「2:8」あるいは「6:4」になる、±20%を超える、そこまでの事態はなかったように記憶しています。もちろん毎日細かく見ていたわけではないのですが、結果論で言うと、高リスク資産同士のリバランスについては必要ありませんでした。
これからはオールカントリーにしますので、この比率を意識することもなくなります。
いったんの、まとめ
60歳からの投資成功は、「リターン」よりも「規律あるリスク管理」にかかっています。ご自身のリスク許容度と、許容できる手間を考慮し、最適なリバランスのルールと方法を確立しましょう。 なお、このブログについては、私もこれから有効性を検証する段階です。誤りがある可能性もあることをご承知おきください。
山崎元さんのブログを読み返してみる
ここまで考えて、改めて、山崎元さんのブログを検索して読み返してみました。 すると、リバランスというのは非常に取り扱いの難しい考えだということが分かりました。
- 合理的な運用のために考えたい、「リバランス」のあれこれ | トウシル 楽天証券の投資情報メディア
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/38779
上記記事の紹介をして、このブログはいったん終わりたいと思います。 できれば、続きを書いてみたい(検討してみたい)と考えています。