完璧でなくても素晴らしいコンサート:クラリネット奏者チャールズ・ナイディック氏の超絶技巧
※コンサートの備忘録です
出演
- チャールズ・ナイディック(クラリネット)Charles Neidich
- ロバート・レヴィン(ピアノ)Robert D. Levin
- 水谷川優子(チェロ)
演目
ピアニストの体調不良により、一部のプログラムが変更されました。
- J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 BWV1007(チェロ独奏)
- ベートーヴェン:クラリネットとチェロのための二重奏曲 WoO27 から2曲(クラリネット、チェロ)
- ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番へ短調 Op.120-1 より第2楽章(クラリネット、ピアノ)
- ストラヴィンスキー:クラリネットのための3つの小品(クラリネット)
- エディソン・デニソフ:クラリネットのためのソナタ(クラリネット)
- メイヤー・クプファーマン:クラリネットソロのための MOONFLOWERS BABY!(クラリネット)
- シュラミト・ラン:クラリネットとチェロのためのプライヴェート・ゲーム(クラリネット、チェロ)
- ギヨーム・コネッソン:クラリネットとチェロのためのディスコ・トッカータ(クラリネット、チェロ)
- モーツァルト:ピアノソナタ第13番 変ロ長調 K.333 より第2楽章(ピアノ独奏)
エピソード
完璧でなくても素晴らしいコンサート
ピアニストが体調不良ということでどうなるのか心配になりましたが、結果として素晴らしいコンサートでした。 水谷川優子さんの、公演に不測の事態はつきものだが、「我々演奏家は常に最善を尽くす」ものだという言葉が印象的でした。
結果として急遽、水谷川優子さんのチェロ独奏やベートーベンの2曲が演奏されました。これは、困難な状況下でのプロフェッショナルな対応を強く印象づけます。
ベートーベンの2曲は、ファゴットをチェロに変えるというアイデアのある作品で、工夫の楽しさ、プロとしての臨機応変さや引き出しの多さ、何としてでもコンサートを成立させるという気概を感じました。
ブラームスのクラリネット ソナタのエピソード
作曲の背景: ブラームスは1890年に作曲活動からの引退を考えていましたが、当時著名なクラリネット奏者であったリヒャルト・ミュールフェルトの演奏に深く感銘を受け、再び創作意欲を燃やしました。このソナタは、彼の最後の室内楽作品の一つであり、クラリネット五重奏曲、クラリネット三重奏曲に続いて、ミュールフェルトのために書かれた作品です。
ある意味、私のイメージにあるようなブラームスらしさのない、内省的で温かい、穏やかで素直な親しみやすい作品と感じました。ブラームスのクラリネット作品をチェックしたくなりました。
クラリネット独奏
チャールズ・ナイディック氏の超絶技巧に驚きました。
- ストラビンスキーの作品は2本のクラリネットを持ち替えます。ジャズの要素もあり、緻密で非常に完成度の高い作品でした。このように精神的緊張を常に保ったような作曲はなかなかできるものではないでしょう。平和に生きる我々には難しいのかもしれません。しかしそれだけに終わりません。我々からも何か言い返したい、という気持ちも感じさせてくれました。
- 日本人から見ると尺八のような音のゆれを取り入れた作品もありました。エディソン・デニソフの作品だったと思いますが、間違っている可能性もあります。
- シュラミト・ラン:クラリネットとチェロのためのプライヴェート・ゲーム、はチャールズ・ナイディック氏が初演した作品ということです
- クラリネットは和音を出すことができる。これにもびっくりしました。詳しくないのでどちらかは分かりませんが、重音奏法 (Multiphonics)というやり方なのか、あるいは短時間のうちに続けて2つ以上の音階を出すことで、残響音を使って和音を表現しているのか。とにかく驚きでした。
- 演目の紹介で彼の英語を通訳してくださった方は奥様だったでしょうか?
ピアノ独奏、モーツァルト:ピアノソナタ
体調は万全ではなかったと思いますが、彼が伝えたかったであろうピアノのタッチやニュアンスが伝わってきました。 コンサート会場で生演奏を対面で聴いているとなぜか、その場では表現されていない、演奏家が目指している理想形みたいなものが伝わってくることがあります。 体調は万全でないにしても伝えたいことがあるという意思を感じました。