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60歳からの投資戦略:インデックスファンドの最終問題、VTについて考える

60歳からの投資戦略:インデックスファンドの最終問題、VTについて考える

前回、REITに関する記事の最後に全世界株式のインデックスファンドの比較表を載せました。再掲します。

比較項目 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・VT) 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド
通称 オルカン 楽天・VT 楽カン
連動を目指す指数 MSCI ACWI Index FTSE Global All Cap Index MSCI ACWI Index
REITの組み入れ 含まれる(不動産セクターに時価総額ベースで) 含まれる(不動産セクターに時価総額ベースで) 含まれる(不動産セクターに時価総額ベースで)
対象銘柄の幅 大型株、中型株 大型株、中型株、小型株 大型株、中型株
信託報酬(税込・年率) 0.05775% 程度 0.132% 程度 0.0561% 程度

現在、オルカンと楽カンの頂上対決となっている全世界株式インデックスファンドですが、これらはどちらも小型株は組み入れられていません

ここで 楽天・VTを見て思い出しました。「俺たちにはまだVT(ブイ・ティー)があったじゃないか

老後の資産形成を最終段階で考える我々にとって、「真の全世界分散」を目指すVTは、最高の選択肢の一つかもしれません。

VTとは:小型株まで網羅する「真のオールカントリー」

VTは、Vanguard Total World Stock ETF(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)のティッカーシンボルです。主にニューヨーク証券取引所NYSE Arca)で売買されています。このETFが連動を目指しているのが、FTSE Global All Cap Indexです。

VTおよびFTSE Global All Cap Indexの最大の特徴は、以下の通りです。

  1. 市場の網羅性: 全世界大型株、中型株に加え、小型株(スモールキャップ)までをカバーしており、世界の株式市場の約98%を網羅しています。
  2. 分散効果の極大化: オルカンや楽カンがカバーしていない小型株にも、成長の機会を求めることができます。小型株はハイリスク・ハイリターンな傾向があるため、老後資金の最終ポートフォリオに入れるかどうかは慎重な判断が必要です。

MSCIにも似たようなインデックスはあるらしい

FTSE Global All Cap Indexと並ぶインデックスプロバイダーであるMSCIにも、同じく全世界の大型株から小型株までをカバーするインデックスがあります。それが、MSCI ACWI IMI(All Country World Investable Market Index)です。

しかし、残念ながら、MSCI ACWI IMIに直接連動した低コストな日本の公募投資信託は、現状のところ存在しません。そのため、完全なオールキャップ型を求める場合、現時点ではFTSE Global All Cap Index(VT)に連動するファンドが唯一の選択肢となります。

楽天・VT、SBI・VTは信託報酬の課題

FTSE Global All Cap Indexに連動する日本の投資信託は、以下の2つが有名です。これらはどちらも、実質的にVTを含むバンガード社のETFを投資対象としています。

比較項目 楽天・全世界株式インデックス・ファンド(楽天・VT) SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド
通称 楽天・VT SBI・V 全世界株
連動を目指す指数 FTSE Global All Cap Index FTSE Global All Cap Index
対象銘柄の幅 大型株、中型株、小型株 大型株、中型株、小型株
信託報酬(税込・年率) 0.1022% 0.1438% 程度

【60歳からの視点】

  • 信託報酬の差: オルカン/楽カン(約0.05%台)と比較すると、楽天・VT(0.1022%)やSBI・V(0.1438%)は約2倍~3倍のコストがかかります。
  • 判断の難しさ: このコスト差と、VTが持つ小型株による分散効果とリターン上乗せの可能性を天秤にかける必要があります。小型株の恩恵は魅力的ですが、残り期間が限られた60歳からの投資では、確実なコストの低さを優先する選択も有力です。

海外ETFの課題:二重課税と手間の壁

VTそのもの(海外ETF)を、例えば米国の証券口座を開設して購入することは不可能ではありません。

しかし、海外のインデックスファンドやETF保有・購入する場合、以下の課題に直面します。

  • 二重課税: 米国では配当金に対し10%課税され、さらに日本でも課税されます。確定申告で「外国税額控除」の手続きを毎年行うことで二重課税を回避できますが、手間がかかります。
  • 為替リスクと手数料: 毎回、円をドルに両替する際の為替手数料や、海外送金の手間が発生します。
  • 相続の複雑さ: 海外資産は、国内資産に比べて手続きが複雑化しがちです。特に米国の税制が絡むため、相続時に非常に面倒な手続きが発生する可能性があります。
  • 管理の複雑さ: 国内の特定口座やNISA口座での管理に比べ、手続きが煩雑になりがちです。

【60歳からの視点】 煩雑な手続きや、将来的な相続の手間を避け、シンプルで低コストな運用を求める場合は、国内の投資信託で完結させる方が賢明です。

📈 パフォーマンスの真実:長期データが示す変動性

実際、FTSE Global All Cap Indexの算出が始まった2003年以降の長期データ(約20年間)を比較しても、MSCI ACWI IndexとFTSE Global All Cap Indexの年率リターンは極めて近似していることが示されています。

銘柄数が3倍近く違ってもリターンが似る理由は、全世界の時価総額の大半を、両指数が共通して保有する大型株・中型株が占めているからです。FTSEが追加する小型株の市場への寄与は限定的です。

重要なのは、小型株の優位性によるリターンの上乗せは期間によって変動し、予測が困難であるという点です。一方で、VT連動型ファンドの「信託報酬の差(オルカン/楽カンより約2〜3倍高い)」というコストは確実に毎年発生します。

したがって、確実な低コストというメリットを捨てて、不確実なリターン上乗せを追うのは、特に残り期間が限られた60歳からの投資においては、合理性を欠くという判断になりやすいのです。

【補足】 もちろん、僅かな年率リターンの差であっても、それが10年、20年と積み重なると、複利の効果によって累積リターンには大きな差が生まれることも事実です。仮に年あたり0.1%の差だとしても、10年後には累積で約1%(単純計算)の差がつき、小型株を含むVT連動型ファンドの魅力はそこにあると言えます。

まとめ:引き続き低コスト化をウォッチしたいVT

現時点の日本では、完全なオールキャップ型(FTSE Global All Cap Index連動)のインデックスファンドは、存在するか、あってもオルカン・楽カンに比較すると信託報酬に難があるという結論になります。

選択肢 メリット デメリット 現時点の評価
オルカン/楽カン (MSCI ACWI) 信託報酬が極めて低い、手間がない。 小型株が入っていない(分散の完全性で劣る)。 現時点での有力候補
楽天・VT/SBI・V (FTSE GACI) 小型株まで含む、真のオールカバー。 オルカンに比べコストが高い コスト面で劣る

最終的な判断は「小型株を含むことによるリターンの上乗せが、コスト差を上回るか否か」という、極めて個人的な判断となります。

現状では、確実なコストの低さを選ぶオルカン・楽カンに軍配が上がりますが、VT連動型ファンドの信託報酬がオルカン並みに低減すれば、「小型株まで含む真の全世界分散」という点で非常に魅力的な選択肢となります。

将来的なコスト競争が進むことを期待し、VT連動型ファンドの動向を継続してウォッチしていこうと思います。