高所恐怖症が選ぶ「震えた場所」私的ベスト3
「高いところが苦手」と言うと、単に度胸がないだけだと思われがちですが、実はそうではありません。私に言わせれば、高所恐怖症とは「類まれなる想像力の副産物」なのです。
今回は、そんな私が実際に体験して「二度と御免だ」と感じた場所を、私なりの分析を交えてご紹介します。
高所恐怖症、どんな人がなりやすい?
私が思うに、高所恐怖症の正体は「転落するかもしれない」という最悪の事態を瞬時にシミュレーションしてしまう想像力の豊かさです。
それに加えて、「自分の意志に対する確信のなさ」も影響している気がします。「今、この手すりを乗り越える選択をすることは不可能ではない。もし、ふらっと身を投げてしまったらどうしよう」という、自分ですら制御しきれない衝動への恐怖。
ちなみに、なだらかな山の斜面なら大丈夫。足の裏が地面にしっかり着いている感覚があれば、脳はアラートを鳴らしません。問題は「人工的な、切り立った高さ」なのです。
何だか死んでもいいような
高所恐怖症のことを考えるとき、なぜか思い出す一節があります。
1966年(昭和41年)に21歳の若さで亡くなった詩人、矢沢宰の 「早春」の一節
生きなければいけないけれど
何だか死んでもいいような
合唱曲で聞きましたが、春の生命力と同時に感じるけだるさが印象的でした。
第3位:神戸大橋(ポートアイランドへ続く橋)
神戸のポートターミナルとポートアイランドを繋ぐ、真っ赤なアーチ橋です。ここを歩いて渡った時のことは忘れられません。
- 怖いポイント:スケルトンに透ける海面 歩道を進むと、足元から、はるか下の海面がスケルトン状に透けて見えてしまう箇所があります。あの「足元が虚空に繋がっている」感覚は、視覚から直接、脳の生存本能を揺さぶってきます。一歩踏み出すたびに、海面に落下する自分のイメージで生きた心地がしませんでした。
第2位:シドニー・ハーバーブリッジ
オーストラリアの象徴、巨大な鉄の橋。ここはスケールが違いすぎました。
- 怖いポイント:不気味な長周期の揺れ 風の影響か、巨大な橋全体がゆったりと、大きく揺れているのが分かります。あの長周期の揺れは、橋の巨大な質量を実感させ、かえって逃げ場のない不安を煽ります。 さらに、下を大型客船が通過できるほどの高さがあるのも問題です。橋の上から客船の屋上を真下に見下ろした瞬間、「あそこまで真っ逆さまだ」という想像が止まらなくなりました。
第1位:五稜郭タワー
北海道の美しい星形を望む展望台。しかし私にとっては、景色よりも「吸い込まれる感覚」との戦いでした。
- 怖いポイント:逃げ場のない広大な風景 視界を遮るものがない北海道の大地があまりに広すぎて、かえって平衡感覚を失います。視線が遠くへ行けば行くほど、自分の立ち位置の細さが強調され、どこまでも風景に吸い込まれてしまいそうな恐怖。あそこまでの開放感は、もはや「高さ」という暴力です。また、タワーは下が細く、その上の展望台がせり出していて、下を見下ろすことができます。この構造も最悪です。
最後に
こうして振り返ってみると、世の中にはわざわざ高いところに登りたがる人が多いことに驚かされます。
私はこれまでの経験から、ひとつ心に決めていることがあります。 「東京スカイツリーには、一生、絶対に行かない」。
あんな高さを想像しただけで、書いている今もお尻のあたりがピクピクしてきますから。皆さんも、自分の想像力の使い道にはくれぐれもお気をつけください。