drambuieの日記

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半々ゲームの謎:詐欺や投資本の世界

半々ゲームの謎:詐欺や投資本の世界

昭和の時代にベストセラーとなった多湖 輝『頭の体操』という本のシリーズがあります。小学生のころ夢中になって読みました。

今回の元ネタは確かそこに書かれていたテーマです。

天才相場師の謎 🧙‍♂️

ある日、あなたに投資を勧める電話がかかってきます。(昭和の話のため電話ですが、現代ならメールでもチャットでもいいです)

「A社の株が値上がりしますよ、買いませんか?」 信用できないので断りましたが、その話の通り、A社の株は上がりました。

次の日も、かかってきました。 「B社の株が値上がりしますよ、買いませんか?」 その話の通り、B社の株は上がりました。 次の日も、かかってきました。 「C社の株が値上がりしますよ、買いませんか?」 その話の通り、C社の株は上がりました。

この電話の相手は投資の天才に違いない、あなたは、この人に自分のお金をまかせることにしました。

しかし、この相手は実は、株のことなんか知らないただの詐欺師でした。どのようにして、予想を当てることができたのでしょうか?

答え:多くの人に電話をかけていたから 📞

例えば、最初の日に1000人の人に電話をかけたとします。半分の人にはA社の値上がりを、半分の人には値下がりを予想します。

次の日は、予想が当たった500人の人に電話をかけます。半分の人にはB社の値上がりを、半分の人には値下がりを予想します。

次の日は、予想が当たった250人の人に電話をかけます。半分の人にはC社の値上がりを、半分の人には値下がりを予想します。

このように予想が当たった半分の人に連絡を取るという手法だったというのが、答えです。結果として、あなたにとってはこの人物の予想が3回連続で的中したという事実に変わりはありません。しかし、その裏には、予想が外れた多数の存在があるのです。

世の中にある多くの投資本は、単なる確率のなかの生存者に過ぎない

成功者の話はそのままは受け入れられない 📉

この、「成功した人やモノだけを見て、失敗して消えていった人やモノを考慮に入れない」という認知の歪みは、心理学や統計学生存者バイアス(Survivorship Bias)と呼ばれています。

世の中のベストセラーとなっている投資本や自己啓発本、成功法則は、このバイアスに強く影響を受けています。

  • 「たった3つの秘訣で成功!」と書かれた本は、その「3つの秘訣」を試して失敗した無数の人々については語りません。
  • 「この手法で資産が10倍に」という謳い文句は、同じ手法を試して資産を失った人々を無視しています。

私たち人間は、目立つ成功例に惹かれ、そこから法則性を見つけ出そうとします。しかし、それは「半々ゲーム」の詐欺師に惹かれてしまう心理と構造は同じです。

重要なのは、「何が成功したか」を見るだけでなく、「同じことをして何が失敗したか」、そして「成功しなかった大多数の集団(コントロール群)」はどうなったのか、という「見えない部分」に目を向けることです。

投資や人生の決断をする際、私たちは「生存者の証言」を鵜呑みにせず、その裏に隠された「消え去った人々のデータ」も考慮に入れる、批判的思考を持つ必要があるのです。

成功談の裏に隠された現実

同じように、スポーツでも芸術でも、成功した人が「夢をあきらめないで」という趣旨の発言をします。

ちょっと皮肉すぎる見方ですが、これは彼らが諦めないことにより、たまたま成功したからにすぎません。同じように諦めずとも、成功者となれなかった人々も無数に存在します。

もちろん、かといって成功しなかった人の人生は無駄だったのかと言うとそんなこともありません。例えば、将棋の発展は一部の天才棋士だけによるものではありません。その天才に挑む多くの棋士たち、あるいは対戦を鑑賞し、様々な批評を行うプロやアマチュア、そうした集団の膨大な創造的な思考が結果として、天才棋士を生み出す土壌となっています。

しかし、世の中には名を成さずして、人知れず消え去る人々の方が多いことも、これもまた事実です。

常に成功しなかった人々の存在を忘れない、これは投資だけでなく、社会の様々な現象を観る際の重要な視点です。