60歳の退職金戦略:確定給付型(DB)世代の退職金受取
DBとDC
我々が最後の世代でしょうか。退職金が確定給付型(DB)の世代です。少なくとも、確定給付型(DB)が「当たり前」だった時代は終わっていますね。
私の会社の場合ですが、確か私の入社より数年後の入社から、確定拠出型(DC)を取り入れたと記憶しています。
ここで、あらためて「DB」と「DC」の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 確定給付型(DB) | 確定拠出型(DC) |
|---|---|---|
| 運用の責任 | 会社が負う | 自分が負う |
| 受け取り額 | あらかじめ約束されている | 運用成果によって変動する |
| リスク | 会社が運用に失敗しても額は維持される | 自己責任。元本割れの可能性もある |
昨今の株高を見ていると、DCで自分で運用していたら、「もっと退職金が多かったかもな」と思わずにはいられません。 ※現在の標準的なDB制度:予定利率2.0%〜2.5%程度
ただ、DB型にもいいところはあります。 どうやって受け取るか考えてみましょう。
三階建て構造
私の場合、確定給付型(DB)の退職金は三階建て構造となっています。
- 第一年金: 20年有期/終身/一時金として受け取れます
- 第二年金: 有期の年金/または一時金として受け取れます。50%年金50%一時金というパターンも可能です
- 第三年金: 20年有期/一時金として受け取れます
どうしてこうなったのか歴史的な背景の詳細は把握していませんが、当初の第一年金がまだ平均寿命が短かった時代に設計された後、長寿命化が進む中で、企業側のリスクを抑えつつも、他社に追随して退職金を増やしたという感じなのかなぁ、と想像しています。
まあ、企業が社員の「老後の安心」と「会社の負担軽減」を両立させようとしてきた試行錯誤の結果でしょうか。
年金担当のブラックジョーク
入社した時の年金制度の説明で、担当者が言ったブラックジョークを思い出します。
入社した当時、男性の平均寿命は確か76歳ぐらいでした。しかし担当者曰く「当社は在職中激務のせいでしょうか、70歳ぐらいで亡くなる方が多いんですよね。年金担当としては助かりますが。ハハハ……」社員をマクロで見る年金担当らしいコメントでした。
なるほど、じゃあ私はなるべく長生きして年金をちゃんともらおうと決意した瞬間です。
私の場合
私は平社員で退職金もそれほど金額がないので、有期の年金か一時金かで比較すると、一時金で受け取り、退職金控除の枠を、最大限、有効利用したほうがいいようです。
ここで、注目すべきは、第一年金の「終身」という選択です。
長生きリスクに対する対応として、「終身」という選択肢があることは、大変ありがたいことです。 私の場合で言うと、具体的な数字はさすがに控えますが、受け取り開始から24年以上長生きすれば、20年有期より終身のほうがお得みたいです。 ※年額30万円程度でそれほどの金額ではありません。
しかし重要なのは、金額面の損得はどうでもよくて、それが「終身」だということです。
「損得」を超えた、終わりのない安心
「24年以上長生きすれば元が取れる」……。 計算上はシンプルですが、いざ自分の人生に当てはめると、これは単なるマネーゲームではなく「自分の寿命をどう見積もるか」という哲学的な問いに変わります。 自分がいつまで生きるか、それは自然現象であり、それを自分では決めることができません。
現在の日本男性の平均寿命は約81歳、女性は約87歳。
一時金で受け取れば、退職所得控除をフル活用して「今、この手に」まとまった現金が手に入ります。自分で運用すれば、DBの予定利率以上のリターンを狙える可能性だってあるでしょう。
それでも「終身」に惹かれるのは、それが「死ぬまで枯れない泉」だからです。
終身年金は「心のインフラ」
老後、もっとも怖いのは資産が減っていくことそのものよりも、「このペースで使って、死ぬまで持つだろうか?」という不安に付きまとわれることではないでしょうか。
- 一時金: 自分で管理・運用する自由があるが、常に「残高」を気にする人生。
- 終身年金: 額は小さくても、自分が何歳になろうが、決まった日に口座に火が灯る。
この安心感は、利回りや控除額の計算式には現れない、プライスレスな価値です。特に私のような平社員にとって、その「小さな、でも確実な上乗せ」が、老後の精神的な余裕(QOL)を支えてくれる気がしてなりません。
80歳、90歳になっても、オルカンの値動きを気にしている自分は想像できません。
唯一の懸念は「インフレ」
ここまで「終身」の魅力を語ってきましたが、冷静に考えると弱点もあります。それは「インフレ(物価上昇)」です。
DBの終身年金は、基本的に受取額が固定されています。今後、想像を超えるスピードで物価が上がっていった場合、額面上は同じでも、その「価値」は目減りしてしまいます。
「死ぬまで枯れない泉」ではあっても、その水量が世の中の渇き(物価高)に対して十分であり続けるかどうか……。そこは、一時金で受け取って運用に回す「攻め」の姿勢には勝てない部分かもしれません。
インフレに対しては、私の場合オルカン100%のNISAなどで補っていく必要がありそうです。若干、面倒くさいですが、がんばります。
まとめ:自分らしい「出口戦略」
結局のところ、退職金戦略に正解はありません。あるのは「自分がどういう老後を過ごしたいか」という選択だけです。
私の現時点での結論はこうです。 「第二・第三年金は一時金で受け取って、退職所得控除の恩恵をしっかり受ける。そして第一年金は、あえて終身という『保険』として残しておく」。
これがいわゆる、ハイブリッド作戦。何かを決めているようで、一方には決めないという戦略です。 攻めの資産運用(DC的な発想)と、守りの終身(DBの特権)を組み合わせることで、最後のDB世代としての「特権」を使い切りたいと思います。
皆さんは「確実な今」を取りますか? それとも「終わりのない安心」を選びますか?
※こうした長期的な年金制度については「年金資産の運用等で想定範囲を超えた財政の不均衡が生じた場合、給付額が変動(増額または減額)します。」といった但し書きが付いていることは最後に補足しておきます。